恋色流星群
9#瀬名side
ホテルの前でバスが停まって。
楽しかった1日の終わりが見えてきた。
東京とは違う、吸い込まれそうな青の下で1日中笑った私は。
少し頬がひりひりする。
理沙子さんから借りた日焼け止め、遠慮なくたくさん塗ったのにな。
海に入ったからかな・・・
千代さんたちと、先にバスを降りる直生さんが見えた。
直生さんも、少し焼けたのかも。頬が赤い。
いつもの「かっこいい」と「可愛い」の絶妙なバランスが。
今日は、完全に「可愛い」に傾いてた。
一緒に海に行けたなんて。
今日は人生最高の日だったな。
ぼんやり、見つめていると。
やばい、目が合った。
見てるの気づかれた?!?!
瞬間、焦りで息が止まる私に、ふっと三日月の目をくれて。
スタンスタンとバスを降りて行った。
あーあ。
また、好きになっちゃった。
きゅうっと握られた心臓が苦しい。
“好き”に容量オーバーはないのかな。
比例する“切ない”と、後を追いかける“欲”に。
私はいつまで勝てるのかな。
バスを降りたところで、他のスタッフさんたちにバーベキュー不参加の旨を伝え、みんなの輪を離れた。
理沙子さんの携帯を鳴らしてみる。
・・・出ないな。寝てるのかも。
一瞬、部屋に寄ってみようかとも思ったけど。
私もお腹空いたし、このまま女子会の材料調達に向かっちゃおう。
「瀬名さん。」
携帯をポシェットに戻して歩き出そうとしたところで。
振り返ると、同じく輪を外れた直生さんがいた。