恋色流星群

初めて知る航大の“抱かれ心地”に。

反応できず、ただ抱きすくめられる。




「・・・携帯どうしたの。」


あ、やばい。

朝方電源切ったままだ。




「連絡しろっつったじゃん。」




きゅうっと巻きつく腕に力が入り、ますます胸が苦しい。


怖くて、いろいろ恥ずかしくて、このまま振り返りたくないと思う。




『ごめ・・・』





その、時。

振り絞った声と重なる、エレベーターの到着を知らせる音と。

誰かが降りた気配。






ま、まさか、こっちに、来る・・・?!




やばい、この状況はやばい!

この人“芸能人”!汗



『こ、航大、離して!』

「やだ」

『やだじゃねーよ、一旦離して!!』



甘くまとわりつく腕を無理やり引き剥がして。

とりあえず隠さなきゃと、航大の手首を掴んで部屋の前まで走る。


震える手でゴヤールのトートからキーを探し開いた扉に滑り込んだ。








『・・・はぁっ、はぁっ・・・』


焦った。。汗

見られてないよね?何とか、角を曲がられる前に部屋に入れたよね?




「なにこそこそしてんの?」


訝しげな表情の航大に。



『航大のせいでしょーが!外であんなの困るよ!』


「じゃあ、ここでならしてもいいの?」




少し背を屈めるようにして、すぅっと私を覗きこむ。



『んなわけねー・・・』



ピンポーーーーン





今度は、私の声と部屋のベルが重なる。



ドア越しに聞こえる

「理沙子さん、寝てるのかなぁ。」

瀬名ちゃんの声。


ドアが透けて見えるように、両手いっぱいに今夜の宴の材料を手にした姿が浮かんだ。






さっきのエレベーター、瀬名ちゃんだったんだ。


ど、どーしよう・・・

とりあえず、開けなきゃ。

航大は、知り合いだもんね。とりあえず見舞いに来てくれていた、ということで。




ドアに手をかけようとしたところで









「開けなくていい。」








強く手首を引かれ、前のめりにバランスを崩す。









今度は正々堂々前から


胸の中に閉じ込められた。

< 83 / 311 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop