恋色流星群

11#瀬名side


タフッと柔らかな音で閉まったドアの前で。

行き場をなくした私と、巻き添えになった直生さん。


女子会、中止になっちゃった。
バーベキュー、戻ろうかなぁ・・・。

だけど、張り切って買いすぎた宴のお供。
勿体ないしなぁ、けど一人で食べるのは寂しいなぁ・・・。




まさか、七瀬くんが出てくるなんて驚いたけど。

理沙子さん、熱上がってたんだ。
今日一日、一人にしてビーチへ行ってしまった自分を後悔した。やっぱり私が、そばで見てあげられていたら。







「今日、花火あがるの知ってる?」



直生さんの声で、はっと我にかえる。



「あ、す、すいません!
ここはもう大丈夫なんで、直生さんはとりあえずバーベキュー戻ってください。みんな待ってるし。」



そう言いながら、たくさん持たせたままだったビニール袋に手を伸ばし、受け取ろうとして。


だけど直生さんはグッと力を入れて、袋を受け渡さない。




「瀬名さんは?一緒に戻る?」


「私は・・・どうしようかな。
とりあえず部屋に戻って、これを冷蔵庫に入れたり整理します。」


「ホテルの人に聞いたんだけど。
今日の花火、この先のビーチからが一番きれいに見えるらしくて。」


「え?花火?今日、花火あるんですか?」





花火。夏っぽくていいなぁ。

バーベキューでみんなと見れたら。
やりきった海外ロケ。最高の締めくくりになるだろうな。









「このまま行かない?」


「え?」


「せっかくこんなにお供があるわけだし。
付き合っていただけると、ありがたいんですが。」









どくんと跳ねた、自分の心臓の音が聞こえた。







「俺とでよければ、だけど。笑」









直生さんと一緒でも行けない場所なんて

私には、どこにもない。




「い・・・いいんですか・・・?」

「何が?俺が誘ってるんだけど。笑」






泣きそう。

こんなご褒美をもらえるほど、

私がんばれてないのに。







「・・・よろしくお願いします」

「こちらこそ。笑」









行こっかと笑い、エレベーターの方へ戻る直生さん。


背中を、追いかける。

初めて会った日から

憧れた、この背中を。





湧き上がる自分の欲に、嫌になる日も傷つく日もあるけれど。







直生さんの夢が、叶いますように。






この背中の後ろにいれば、

浮かんでくるのはそれしかなくて。









「喉乾いたね〜。花火の前に飲んでもいいかな?」



ビールの袋を持ち上げて、振り返る三日月の目が。



嬉しくて私は、やっぱり泣きそう。
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