恋色流星群
そっと開けたドアの隙間から部屋を覗くと。
まだ、いるし。
だいたい、何しに来たんだよ・・・
「理沙子、あがった?」
返事をせずに。濡れた髪をふきながらベッドルームに向かう。
シャワーから出たら、ますますだるくなった体。
疲れた、眠たい・・・。
髪を乾かさないで寝ることなんて、滅多にないけれど。
今日は、もう、このまま寝ちゃう・・・。
「寝る?」
水のペットボトルと薬を片手に追いかけてきた航大は。
「髪、濡れてるじゃん」と呟いて踵を返し、ドライヤーを片手に戻ってきた。
どうか、私の引き連れるローズの香りに気づいていませんように。
「まずこれ飲んで、ここ座って。」
いつものように、めんどくせーと抵抗する余力もなく。言われるがままに薬を飲んで、指示された床に座る。
ブオォォォーーー
気づけば、気持ちのいい手櫛でふわふわ揺れる髪。
なんか・・・えらい気持ちいいんですけど。
乾かすの上手だな。特技なのかな?
ぼんやりと、蘇る記憶。
寝る前に誰かに髪を乾かしてもらうのは、とても気持ちがいい。
私はそれを、よく知っている。
「はい、いいよ。」
カチッという音と同時に、航大の声が聞こえた。
『ありがと。いい友達持ってよかった~。』
やっと寝れる・・・。
ぼうっとする頭で、一瞬目を閉じたとき。後ろから、右肩に乗せられた顎。
「ねぇ
この香り、俺の?」
耳元に響く、低く甘い囁き声。
ローズばれてる!汗
『・・・!』
思わず顔を右側に向けたら、あまりにも近い航大の顔に今度は仰け反る。
た、たすけて!!汗
慌てて立ち上がろうとすると、ドライヤーのコードに足先が引っかかり。
『・・・わっ』
「おい!」
前のめりに倒れる、私の腕を引く航大と。
きっと航大の予想に反して思いっきり引かれた、私の体。
私を上にして、
ベッドに
倒れこんだ。
いわゆる、床?ドン。
急に間近で見る顔に、息が止まる。
私を見据える、透ける瞳と見慣れた涙ぼくろ。
『ごめ・・・』
焦って、この場を脱しようと動いた瞬間。
首の後ろを強く引き寄せられて。更に顔までの距離が近づいた。
5センチの距離に
息が止まる。
視界には、
嫉妬さえ感じる
綺麗すぎる航大の顔だけ。