恋色流星群
15#瀬名side
なんか昨日は、えらい楽しかった気がする。
起きたら、昨日のワンピースのままだったのが気になったけど。ちゃんとベッドで寝れてたし。
途中から、ところどころ飛び飛びの記憶になるんだけど・・・ちょっと、酔ってたのかも。
直生さんの隣、緊張して。
ペース早く飲んじゃったから。
だけど。
直生さん、たくさん笑ってくれてた気がするし。
花火もきれいだったし。
いい思い出ができたな・・・。
直生さんと、花火。来世まで、語り継ぐべき光栄。
濡れた髪を拭きながらバスルームを出ると、テーブルの上にペットボトルの水が置いてあるのに気づいた。
あれ?私こんなとこに置きっぱなしにしたっけ?
ちょうど喉渇いてたから助かる、と思い近づくと。
ボトルの麓に、小さな紙。
ん?
「・・・!!!!!」
“一週間、ありがとう。
瀬名さんのおかげで、とても楽しかったです
好き嫌いないなら、お店は任せてもらうね。
仕事落ち着いたら連絡ください。
お互いしばらく、がんばりましょう!
090-×××…
片倉 直生”
な、な、な
なんじゃこりゃ・・・
わ、わ、わ
私は一体、昨晩何を・・・
今、ハワイにいる“片倉さん”を。
一人だけなら、私も知っている。
鼓動が頭で鳴り響く。
息を止める。
昨日何をどう話したのか思い出せ。
必死で、頭中の引き出しを開けて
記憶をたどる。
けど、こんなときにも直生さんの大きな笑顔しか出てこない。
好き嫌いって、なに?
お店って、なに?
明らかに、どこか行く約束した?
そして・・・
輝く末尾の11桁は。
だめだ、
目眩と動悸が止まらない。
これはきっと、神様の罠だ。
私はこれで、また不毛な夢から目覚められない。
紙の上の筆跡を、そっとなぞる。直生さんって、こんな綺麗な字を書くんだ。
また一つ知った、彼を彩るパーツに。
きゅうっと、胸が苦しい。
もう、いいか。
不毛でもなんでも。
どうせ私の世界には、直生さん以上なんていない。
眠れない夜も、必ず明けるんだ。
そしたら私はまた、直生さんの世界の端っこで生きられる。
カーテンを開けば、キラキラに太陽を反射する
ブルーの水面下。
今日でさよならの楽園。
もう、
泣かないで理沙子さんに話せそう。
早く理沙子さんに会いたい。