(仮)センセイに恋の法律相談
「………」
「………」

膠着状態が続いた。


ザザッ。
やがて緊張に耐えきれなくなった私は、地面におシリをつけたまま、後ろ向きに手をこいで後ずさった。


すると男は、気だるげにヘルメットを脱いでサラリと髪を掻き上げた。

顔は逆光で真っ黒、表情は窺えないが……背が高くて怖そうな男の人だ。

長めの不揃いな髪を無造作に後ろに流している。

何から何まで真っ黒な印象の男。

しかし、彼はすぐにひどくコミカルな様子で、不思議そうに首をかしげた。


そうして、スッカリ腰を抜かしている私に手を差し伸べて、言ったのだ。

「“カイ アマネ”ってお前?
甲斐先生の娘の」


カイセンセイの
ムスメの?

もしかして、お父さんの知り合い?


私は恐る恐るコクリと頷くと、恐る恐るその手を取った……




それからのコトはあまりよく覚えていない。
ヒトサライは私にヘルメットを渡し、ここで待つように言うと、縁側から親族会議の中にドカドカと乗り込んでいった。


それから半時程後には、私は件の “モンスター”バイク の後部座席にいた。

そして、初対面の男の背中にしがみつき、お父さんの事務所に向かっていたのだ。

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