私って、男運がないと思うんです

「いったいな、やめろよ」

私の腕を押さえ

「ちょっと落ち着け」

と言いながら、ふわりと抱きしめてきた。


その思いがけない陽さんの行動に
悔しいものの、胸がキューと締め付けられた。


キスも、それ以上のこっぱずかしいこともした関係だけど、こうやって抱きしめられたことなかったな、ふと気付いた。

気付いたら、さっきとは違った意味で胸が締め付けられた。

そんな私の様子になんて気に留めずに

「落ち着いたか。人多いし、移動するぞ」

ついてこい、という風にアゴをしゃくってロビー前に停車しているタクシーに促した。


またキスでもされるかと構えていたものの

先に乗せた私から距離をとって座り

じっと窓の外を眺めていた。

< 104 / 202 >

この作品をシェア

pagetop