私って、男運がないと思うんです
陽さんとの一件以来
これまで以上に仕事に没頭した。
休日も、クライアントの競合となるような店舗を回ったり、同業が企画したイベントに出掛けたり、マーケティングの本を読んだり、自分なりのインプットを増やした。
それを重ねていると、今の森さんのように仕事に対して好意的な声をかけてもらう機会が増えたのだ。
「そういえば聞いた?リアン、来春からシーズンごとのシリーズ化で正式に決まったって」
「そうなんですか!?岡田さん、最近忙しいらしく、ほとんど社内いなくて。やっぱすごいですね。私も早く、そんな大仕掛けできるようになって、森さんにクリエイティブやってもらえるようになりたいです」
「かわいいこと言ってくれるね。今の咲季ちゃんなら、いつでも待ってるよー」
軽い口調の森さんと別れて、自分のデスクに戻った。
リアンと聞いて陽さんのことを思い出し
チクリと少し胸が痛んだことは、コーヒーと一緒に飲み込んだ。