私って、男運がないと思うんです
ほろ酔い気分でお店を出ると空気が冷たくて
「さむっ」と震えた。
そんな私を見て
「こうしたら、あったかいだろー」
真弘がぎゅっと抱きしめてきた。
そして、当たり前のように口唇が重なった。
何度も啄まれて、下唇を軽く噛むいつもの合図に当たり前のように口を開きかけて、ようやくはっとした。
「ダメっ、ダメ」
真弘を押すと、いつかのように
「いや?」と聞いてきた。
そうやって私の目をのぞき込む真弘は
いやじゃなだろ、と疑ってもない表情だった。
その顔を見たら
「わ、わたし、好きな人、いる」
咄嗟に言葉が口から出ていた。
「え、咲季。何。好きな人って・・・」
戸惑っている真弘の顔を見れなくて
徐に背を向けてタクシーに飛び乗った。