待ち合わせはあのカフェで
君と仲良くなった日



「なぁ、陸人」

「ん?」



レッスンが終わり、自主練中。
スタジオの中には、俺たちのほかにも自主練をしているレッスン生がいる。



「神谷さんと連絡先交換した」



踊ったまま陸人に報告。
鏡越しに陸人を見れば、ぱたりと動きが止まった。



「え、いつ?」



棒立ちの陸人と変わらず踊り続ける俺。



「こないだ、一人で夜練習した帰りたまたま会って」

「よかったじゃん!!」



水分補給しようと、一度ダンスをやめれば陸人に両肩を掴まれ揺さぶられる。
揺さぶられている力が強くて、体ごと揺れる。

ちょ、陸人。
力強い。



「陸人!陸人!」



陸人の両腕を何度か叩いた。



「ん?」

「首取れちゃう」



真顔で言った。



「ごめん」



一口、二口、ドリンクを体に流し込む。
陸人も水分補給だったのか、軽く汗を拭いてドリンクを流し込んでいた。



「神谷さん、俺らの名前知ってた」

「え、言ったの?」

「いや、言ってない」

「じゃあ、何で…」

「俺らが名前呼んでるの聞いて覚えたんだって」

「え、何それすご」



俺も最初びっくりした。
思考停止したしね。

タオルとドリンクをさっき置いてた場所に置く。
もう少し練習して帰りたい。
もう思って、また練習していた位置に戻る。



「涼太、まだ練習すんの?」

「うん」

「今日、神谷さんの所は?」

「ケーキだけ買いに行く」

「今回、気合入ってんな」

「まぁ」



とりあえず今は、オーディションに集中したい。
クラスが下がるのだけは絶対嫌だから。
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