待ち合わせはあのカフェで
それからオーディション前日までケーキを買いにカフェに行っていた。
お店で神谷さんと会うと、いつもと同じ世間話をしたり
挨拶を交わしたり。
話ができない時は、手振ったり振り返したり。
忙しい時は、ケーキ買いに来た事すら知らないだろうけど。
「こんにちは」
「どうも」
オーディション前日、久々にお店でケーキを食べようと思い
お店に入った。
いつも座っているテーブルの席に座って注文すると
ドリンクを運んできてくれたのが神谷さんだった。
「明日ですね。オーディション」
「はい。今日だけはゆっくりしたくて」
スクールもない。夜の自主練もやらない。
今日だけは、明日に備えてただただゆっくりする日。
「頑張って下さい。陸人君も。応援してます」
神谷さんが陸人の名前を言えば
驚いた顔をしてポツリと一言呟いた。
「本当に、僕の名前も覚えてる」
いや、そこまで驚かなくてもいいじゃん。
「神谷さん、今度三人で遊びに行きません?」
「へっ…」
急に遊びに誘って驚く神谷さん。
「予定は、神谷さんに合わせます」
「え…いいんですか?」
「はい。神谷さんが良ければ、遊びに行きましょ」
俺の中では、オーディション頑張ったご褒美にしたかった。
まだオーディション終わってないけど。
「あとで連絡しますね!」
「はい。待ってます」
ふと、陸人の顔を見ると目が合った。
やけに冷静な顔してるし。
「本当に、仲良くなってきてるんだね」
「えー、まだ信じてないの?」
「いや、そんな事ない」
俺も陸人もドリンクを一口飲んだ。