待ち合わせはあのカフェで



オーディションの日は、いつものレッスンより少し遅く終わる。
掲示板に結果が貼り出される為、たくさんの人が集まっていた。

貼り出される瞬間は、今でも緊張する。

結果を見て、喜ぶ人も居れば泣いたり落ち込んだりする人も居るわけで…
恒例行事みたいな光景を毎回見る。


俺も結果が気になって、人波をかき分けた。
自分の名前を探す。

あ、あった!

スクールに入ったばっかりの時
お母さんに、「結果を見たらすぐ後ろに下がりなさい」と言われていた。

それから自分の中で
結果報告は人の少ない所でって決めていた。



「どうだった?」



先に結果を見た陸人が壁に寄りかかって待っていた。



「陸人は?」

「俺は…」

 合格 と言葉と同時にパチン。とハイタッチ。
合格した。と言う二人だけの合図。



「今回もよかったー…」

「とりあえず、一安心」

「一安心って何でだよ」

「神谷さんと遊ぶ約束、まだあるでしょ」

「それが安心できないって?」

「うん」

「何で」

「何でって…」



はぁ…と一つため息をついてまた話し出す陸人。



「楽しくなりすぎて失敗しないかとか僕は涼太の事心配してんの!」



珍しく、なんだかムキになってる。

え、何。
陸人、俺の事大好きかよ。

笑いそうになったけど、ここで笑ったら陸人が怒りそうだし


きっと、何も進展がなかった片思いから少しずつ進展するようになった
片思いに変わったから。

だから、心配とか安心できないとか思ってるんだろうな。



「陸人が居れば、そんな事しないから大丈夫」

「は、本当かよ」

「俺、嘘つかないし」

「てか、俺が居なくても絶対しないようにしろよ」

「うん、それが一番理想だね」
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