待ち合わせはあのカフェで
高校一年生の時、神谷さんに一目惚れした。
高校三年間のうち、何度か女の子に告白された事はあったけど
神谷さんの恋を諦める事は出来なかった。
高校の時友達によく、「勿体ない」って言われてたっけ。
何が勿体ないかよく分かんなくて、陸人に聞いたら
「気にすんな」って言われた。
なんか、懐かしい。
一人で思い出に浸ってしまった。
「陸人、今日ご飯食べて帰らない?」
「いつもの所で?」
「うん、もちろん」
「え、神谷さんに会いたいの?」
真顔で聞いてくるから思わず笑ってしまった。
「真顔で聞いてくんなよ」
「だって、合格したのを報告しに行くのかなって思って」
「今日神谷さんが出勤なのか知らないし」
連絡先知ってるからって、仕事があるのかとか知りたいと思わない。
知ってる方が怖い。
ストーカーか!とか、彼氏か!って俺は思ってしまうから。
てか、あんまり仕事の話したことないな。
ダンスの話とか天気の話とか、遊ぶ約束の話とか。
まぁ、それだけで十分楽しいんだけど。
「とりあえず行こう」
「そうだな」
来週から新クラス。
上のクラスに行けば行く程、外部のオーディションも増えてくる。
チャンスさえあれば、そのまま有名アーティストのバックダンサーだって。
夢にますます燃えてきた。
しっかり気引き締めて頑張らなきゃ。
「てか、涼太」
「ん?」
「神谷さんと三人で遊ぶ約束するのはいいけど」
「うん」
「僕の予定もちゃんと分からないと立てられないだろうから連絡先教えて?」
あ…そうだった。