待ち合わせはあのカフェで



「今日もダンススクールの帰りですか?」

「はい。神谷さん今日はカウンターでお仕事ですか?」


そう、僕達があの子と呼んでいる人は神谷さん。


「はい」

「珍しいですね」

「いつもいる先輩が辞めちゃって、その代わりです」

「大変ですね」


神谷さんは、何か言おうとしていた。
けど、タイミングよく他のお客さんに呼ばれてしまった。


「すいません」

「いえ」


軽くお辞儀をして俺達から離れた神谷さん。

終始ニコニコ笑って話してくれて、本当に今日やばい。
営業スマイルでも、幸せすぎる




「涼太何する?」

「俺、いつものでいい。いちごミルクといちごのショートケーキ」

「了解」




お客さんの対応をしている神谷さんの姿をじっと見る。
綺麗な黒髪にシンプルなメイク。耳元に光る小さなピアス。
いつ見ても綺麗に仕事着を着こなしていて、清潔感溢れている。

あ、あのお客さんにも笑顔を向けて…
仕事だから仕方ないのは分かっているけど、その笑顔もっかい俺にも向けてほしい。

なんて、俺バカじゃん。

一人心の中で思っていれば、振り返った神谷さんと目が合った。
うわぁ、ちょ、やばい。え、見てたのばれた…?

内心一人で動揺していれば、「お決まりですか?」と声をかけられた。


どうやら、気づいてないみたいだ。




「いちごミルクとコーラといちごのショートケーキとティラミスパフェ下さい」
「以上でよろしいでしょうか?」
「はい」



神谷さんが陸人の言った注文を繰り返して確認する。

その間も、俺は神谷さんの事を見ていた。
ふと目が合えば、また笑顔を向けてくれた。
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