待ち合わせはあのカフェで



「いただきます」



あ、ちょっと待った。

一回、フォークを置いた。




「え、何。食べないの?」



陸人は先にパフェを食べ始めていた。



「いや、違う。写真撮る」




携帯をポケットから取り出してカシャと音を鳴らす。
料理とか写真撮る事ないんだけど
いつも頼んでる物ににっこりマークが書いてあるのが初めてで
思わず写真撮ろうって思った。

今度こそ



「いただきます」



これだけは神谷さんが出してくれた物とか関係ない。

ケーキを一口、口に入れる。
甘すぎない生クリームに少し酸っぱいいちご。
うん、美味しい。




「涼太、この後は?」

「バイトあるから帰る」

「忙しいんだね」

「お互い様だろ」




高校卒業後、進学も就職もせずに夢を追いかける事にした。
親には、反対されたけど夢を諦めたくなくて反対を押し切った。




「てかさ、もうすぐ校内オーディションだな」

「オーディションと名のテストな」



三か月に一回、クラスが上がるテストがある。
前はよく陸人とどっちが早くクラス上がれるか競っていたけど
今は競い合う事をしなくなった。
陸人が先にクラス上がる時はめっちゃ悔しい。
でも、一緒にクラス上がれるとめっちゃ嬉しい。

陸人は友達でもあるけどライバル。
そう思っているのはきっと、陸人も一緒だと思う。

陸人の頑張っている姿見ると俺も頑張らなきゃって刺激されるし。



「今回クラス上がるかなー」

「努力次第だろ」

「だよなー」



最後の一口、ケーキを口に入れる。
陸人は、カウンターに頬杖をつきながら何か悩んでいた。
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