待ち合わせはあのカフェで
人通りがほとんどない夜。ビルのガラス張りの前。
ラジカセで、近所迷惑にならないくらいの小さな音量で
音楽を流して練習を始める。
陸人は、バイトで来ていない。
今回、大丈夫かな…
陸人の事を考えて踊っている程、自分も余裕があるわけではない。
そう気が付いたのは、目の前のガラスに映ってる自分を見た時。
やばい。
集中しなきゃ。
振りは合っているか、しっかり踊っているか
表現できているか、ガラスに映ってる自分は楽しそうに踊れているか。
音楽が終わるまで自分の中でチェックしていく。
気になった所があっても踊っている時は考えない。
考えたらほかの振りがダメになっていく。
ただひたすら一心に踊っていると
あっという間に音楽が終わった。
「ふぅ」
水分補給してすぐ気になった所の振りの確認。
ゆっくり何度も何度も繰り返す。
自分が納得したらまた音楽を流して練習。
何度も何度も繰り返している途中、携帯が光った。
ふと目に入る。
うっわ、やば。一時すぎてる。早く帰んなきゃ。
リュックを背負って、ラジカセを持って早歩き。
練習の帰り、カフェの前を通った。
この時間はもう閉まってるんだなー。と思いながら早歩きをしていると
目の前に見た事ある女性の姿。
あれ…?
「神谷さん?」
あ、思わず声に出してしまった。
気が付いた時は遅くて、神谷さんは振り向いた。
「どうも、こんばんは」
「こんばんは」
走って神谷さんの隣へ行く。
「こんな時間までお仕事だったんですか?」
「はい」
「お疲れ様です」
「ありがとうございます」