恋愛じかけの業務外取引
11月も下旬になると、寒くなって朝が辛い。
しかし私には幸運にも料理好きの妹がいるため、毎日おいしい朝食にありついている。
「あー。やっぱりユリのカボチャポタージュは最高」
私が呟くと、食卓を囲んでいる両親と弟のアキもうんうんと頷いた。
直後、ユリは無邪気に明るい声で言った。
「じゃあこのスープも彼氏に作ってあげなよ。レシピ、あとで送っておくね」
『彼氏』という言葉に、両親の視線が私に刺さる。
ユリってば、両親の性格をわかっているくせになんてことを……。
「ちょっとマヤ。あんた付き合ってる人いるの? 最近泊まりが続いたと思ったらそういうこと?」
母が興奮気味に身を乗り出す。
「え、いや、その……なんていうか」
いないって言えば泊まりの理由を追及されそうだし、いると言えば紹介しろと言い出すだろう。
だからといって堤さんとの関係を正直に話すわけにもいかないし。
口ごもっていると、先にアキが口を開いた。
「俺もユリ姉も一度会ってるけど、相手超イケメンなんだぜ」
「そうそう。酔っ払ったマヤ姉のこと軽々持ち上げて、カッコよかったなぁ」
ユリまで余計なことを。
ここでとうとう、あまり子供の恋愛には言及しない父までもが口を開いた。
「彼の職業は?」