恋愛じかけの業務外取引
朝からなんだかとても面倒なことになってしまった。
私の結婚を心配してくれているのはありがたいけれど、今追求されるのは困る。
「みんな、お願いだから放っておいて。なにか報告できることがあれば、ちゃんと自分から言う」
ピシャリとそう言い放つと、家族はすごくつまらなそうな顔をして朝食に戻っていった。
山名マヤ。
下から読んでも『やまなまや』。
裏表のない素直な子に育つようそう付けてくれた両親は、私を若くして生んでいる。
年齢でいうと、両親とも当時20歳。
高校を卒業して就職して一年というところで母の妊娠が発覚。
浅はかだとか世間体が悪いとか非難を受けつつ結婚し、苦労の末に私が生まれたという。
生まれてからも皮膚が弱いことで、よけいに苦労をしていたはずだ。
そのせいで両親に心配をかけていたことを理解していたので、幼い私はずっと、強い子になりたいと思っていた。
小学校に上がる前、ユリが生まれた。
『マヤはしっかりしたお姉ちゃんね』
そう褒められたのが嬉しくて、私はもっともっとしっかりしたお姉ちゃんになろうと思った。
その数年後、アキが生まれた。
『マヤは妹と弟、ふたりの世話ができる、たくましいお姉ちゃんだな』
そう褒められたのが嬉しくて、私はもっともっとたくましくなろうと思った。
きっとそれが、私が姉御たる原点だと思う。