恋愛じかけの業務外取引
これまでの29年間、私は自分の強さを証明するため、さまざまなものを守ってきた。
幼い頃は妹や弟を、学生時代は仲間たちを、大人になってからは会社を。
なにかが起これば、迷わず真っ先に矢面に立つ。
問題を解決するために頭を使い、ときには体を張り、怖くても勇気を出し、泣きたくてもグッと堪えて。
でも、私を守ってくれる人はいなかった。
私を好きだと言ってくれた、恋人でさえ。
心身共に頑丈だけれど、甘えたい。
ひとりでも生きていけるけど、支えられたい。
傷つくことには慣れているけれど、守ってもらいたい。
私のようなかわいげのない女には、そう思う資格さえないのだろうか。
『俺は甘えられると嬉しいんだけどな』
次こそはそんな男性と素敵な恋愛を……と思っていたのに、なんということだろう。
無償の家政婦だなんて、もしかして愛人や繋ぎの女よりも立場が悪いのでは。
悔しいけど、それでも一緒にいられるから嬉しい。
愛されなくても、抱きしめられると幸せを感じられる。
こんなの、いいように扱われているだけだ。
どんどん都合のいい女になっているのはわかっている。
男の人に守られる、甘えさせてもらうなんて、マンガや小説だけの夢物語なのだろうか。
私はもうそろそろ、自分が望むように愛されること自体を諦めたほうがいいのかもしれない。