恋愛じかけの業務外取引
この日の夕方、堤凛太郎からこのようなメッセージが送られてきた。
【洗濯よろしく。飯は中華がいい!】
菜摘との一件もあって疲れていたけれど、堤さんに会えると思ったら急に気分が高まる。
私は単純な女なのだ。
【お帰りは何時頃?】という問いに、すぐさま【たぶん10時過ぎる】と返事が来る。
明日も仕事だから泊まりなんてことにはならないと思うが、またあんなに色っぽい雰囲気になってしまったらどうしよう。
私はあの日うっかり彼とキスをするまで「男の人に流される」という経験をしたことがなかった。
一度流されたら止まらなくなってしまうのだと、変な言い方かもしれないが、勉強になった。
ていうか、あの野郎。
『恋愛にはかなり慎重』なんて言いながら手慣れたように私をベッドに沈めやがった。
『器用な真似はできない』とか絶対嘘に決まってる。
嘘つきめ。酷いやつだ。
……なんて思ってみても好きだという気持ちは変わらない。
【回鍋肉にしようかな。私も久々に食べたいし】
そう送った返事が、愛らしい2等身のキャラが跳び上がって喜んでいるスタンプで、私は思わずクスッと笑いを漏らしてしまった。
菜摘には悪いが、こんなやり取りが幸せで仕方ない。
この役を譲りたくない。