恋愛じかけの業務外取引




この日の夕方、堤凛太郎からこのようなメッセージが送られてきた。

【洗濯よろしく。飯は中華がいい!】

菜摘との一件もあって疲れていたけれど、堤さんに会えると思ったら急に気分が高まる。

私は単純な女なのだ。

【お帰りは何時頃?】という問いに、すぐさま【たぶん10時過ぎる】と返事が来る。

明日も仕事だから泊まりなんてことにはならないと思うが、またあんなに色っぽい雰囲気になってしまったらどうしよう。

私はあの日うっかり彼とキスをするまで「男の人に流される」という経験をしたことがなかった。

一度流されたら止まらなくなってしまうのだと、変な言い方かもしれないが、勉強になった。

ていうか、あの野郎。

『恋愛にはかなり慎重』なんて言いながら手慣れたように私をベッドに沈めやがった。

『器用な真似はできない』とか絶対嘘に決まってる。

嘘つきめ。酷いやつだ。

……なんて思ってみても好きだという気持ちは変わらない。

【回鍋肉にしようかな。私も久々に食べたいし】

そう送った返事が、愛らしい2等身のキャラが跳び上がって喜んでいるスタンプで、私は思わずクスッと笑いを漏らしてしまった。

菜摘には悪いが、こんなやり取りが幸せで仕方ない。

この役を譲りたくない。

< 122 / 216 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop