恋愛じかけの業務外取引

つい余計なことを聞いてしまった……。

数秒の沈黙が、重い。

「するって言ったら、どうすんの」

質問に質問で答えるなんて、ズルい。

その気持ちを込めて彼を睨むが、まるで効果がない。

「……怒る」

小さく答えると、フッと軽く笑われてしまった。

なによ、バカにして。

私にとっては大事なことなのに。

「誰にでもするわけないだろ」

それじゃあ、私だけ……?

「かわいい女にしかしないに決まってるじゃん」

なにそれ。やっぱ他の女にもしてるんじゃん。

堤さんの顔が、みるみる私をイジるときの顔になってゆく。

もう嫌な予感しかしない。

私はたぶん、とんでもない失敗をした。

堤さんは察しがいいから、もう隠しきれない。

「つーかマヤ。それ、嫉妬?」

「……そうだよ」

他の女なんかにしてほしくない。私だけにしてほしい。

そう思っちゃいけない?

「お、今日は珍しく素直だな。やっと俺のこと好きになってくれたの?」

やっとって、別にたった今好きになったわけじゃない。

きっかけはとんでもない過失だったけれど、ビジネスシーンでは決して見せない素のあなたを知って、いつの間にか惹かれていた。

「そうだよ」

顔も性格も背丈もかわいくないし、酔って拳であなたを殴ってしまった粗暴な姉御だけど、私だって心も体も女なのだ。

好きな人に愛されたいし、触れたい。

守ってもらいたいし、支えたい。

そう願ってもいいでしょう?

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