恋愛じかけの業務外取引

「たまんないね、その顔。俺が欲しいって書いてある」

気に入った角度があるのか、彼は私の顔を両手で押さえてうっとりと見つめた。

そんなことより、早く続きを……となっている私はもどかしい気持ちで軽くもがく。

しかし彼は次のキスをさせてはくれなかった。

「今日はこれでおしまい」

突然私を解放し、距離をとる。

「え?」

今日はおしまいって、どうして。

自分が『それ以上のこと』を示唆したくせに。

心にも体にも、とっくに火が着いているのに。

熱を持て余した私は、再び目に涙を溜める。

堤さんはそんな私を満足そうに凝視している。

「明日は仕事だし、着替えもないんだろ?」

「そうだけどっ……!」

私はこの高ぶりを、どう解消すればいいの。

いつになるかもわからない『これ以上のこと』を待ち望みながら、ずっと耐えていないといけないのだろうか。

「はは、苦しい?」

いつもと変わらぬ意地悪顔。

私の苦しむ様を楽しみやがって、ムカつく。

やっぱり堤さんはひどい男だ。

私を翻弄してはおもしろがるばかりで、「好き」も「ごめん」も言ってくれない。

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