恋愛じかけの業務外取引
「マヤのおっぱいにキスマーク付けてました」
互いに顔を赤くする。
こんなことなら聞くんじゃなかった。
一応目で確認すると、たしかに左胸のところに赤黒い跡がある。
「どうしてこんなこと……」
「マヤは俺のだって、マーキングしておきたくて」
彼はそう言って私の左胸に触れようとしたが、我に返ったように手を引っ込めた。
私は、堤さんの。
独占欲を持ってもらえることを喜ぶ前に、確認しておかねばならないことがある。
「それは、私を彼女にしていただけるということ?」
再び胸元に布団を強く押し付ける。
彼は頷かず、渋い顔をしたままだ。
「そのことなんだけど……もう少し、俺を見てからジャッジしてほしい」
「は? それ、どういう意味?」
私はもう何度も気持ちを伝えているはずだ。
今さらジャッジなんて必要ない。
聞きたいのはあなたの気持ちと意思なのに。
「説明するから、マヤはまず服を着ようか」
言われるままベッドの隅に追いやられていた自分の衣類を身に着ける。
彼の付けたキスマークはブラトップの中にすっぽり収まった。
言い換えれば、それだけ際どい場所に付けられていたということだが。
身なりを整えた私は、カタい表情をしている彼と対峙する位置に座り直した。