恋愛じかけの業務外取引
その理由に関しては、堤さんもまだ掴めていないという。
ブルーメ側にまたなにか新たな動きがあるらしいのだが、さすがにその内容まではなかなか教えてもらえない。
株式会社ラブグリーンおよび株式会社イズミ商事としては、取扱商品の候補がひとつなくなっただけのこと。
ブルーメとの契約が結べなかったからといって、私たちの評価が大きく下がることもない。
しかし、個人的には強い思い入れがあったから、堤さんに『ブルーメが我々との取引を白紙に戻す可能性が出てきました』と言われたときは、この世の終わりのようにショックだった。
彼が私との関係を保留にしたことより、よっぽど。
現在、ブルーメとの交渉の窓口は堤さんである。
今は彼を信じて待つしかない。
交渉が難航すれば、再びブルーメにうかがうことになるだろう。
「そうか……せっかくいいところまでいってたのにね」
この件を報告すると、斉藤課長も残念そうにため息をついた。
「まだ白紙になると決まったわけではありません。彼を信じます」
そう言い切った私に、課長は顔をほころばせる。
「愛だねぇ」
左胸に印を得た私は、少し照れくさい気持ちで答える。
「はい」
この案件に特別な気持ちがあるのは、私だけじゃない。
この半年、諦めていた私の夢を叶えるために一番頑張ってくれていたのは、堤さんなのだ。