恋愛じかけの業務外取引



いつからか、私はトラブル解決の請負人のような役を担うのが癖になっていた。

かわいいユリが悪い男につきまとわれたとき。

ナヨナヨしているアキが悪ガキどもにいじめられたとき。

お人好しな両親が、悪徳業者に騙されそうになったとき。

いつだって私が前に出て解決してきた。

お節介な姉御は、大切な人が困っていると助けずにはいられない。

仕事でもそんな性格のせいで、トラブルの際には解決に向けて動いてしまうことが多かった。

そこが評価され、チーフに昇進。

そんなつもりもないのに「キャリアウーマン」と呼ばれるようになっていた。

「仕事ができる」とか「頼れる」と言われて、嬉しくなかったわけではない。

人の役に立っていることを実感することで、自分の存在意義を確認できる。

そんな私をみんなが求め、認めてくれている。

だけど私はずっと、ビジネスマンとしてではなく、魅力ある女性として誰かに認められたかった。

モテなくていい。

たったひとり、私が好きになった素敵な人が認めてくれれば。

やっとそんな人に出会えたと思ったのに。

私を『世界一かわいい』と言ってくれる人と、やっと繋がることができたのに。

どうして仕事なんかに邪魔されなくちゃいけないの。

私はやっぱり、望むように愛されることを諦めるべきなのだろうか。



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