恋愛じかけの業務外取引
昨夜は年齢のことがあって焦ったけれど、結果的に邪魔が入ってよかったのかもしれない。
ビジネスの如何が私たちの関係を良好にスタートさせるうえで必要な要素なのだとわかったから、私は待つことに決めた。
「山名さん。絶対に堤さんを逃さない方がいいですよ」
あっさりとそう忠告した彼女に面食らう。
「菜摘ちゃんも彼が好きだったんじゃないの?」
私がデートしたと知っただけで、あんなに怒っていたのに。
散々啖呵を切っておいて、ここにきて応援してくれるなんてどういう風の吹き回しだろう。
「私、バカ正直にはなれないんで。脈のない相手を思い続けたりできません」
「ああ、そう……」
女は切り替えが早いとは言うけれど、ここまでハッキリしていると清々しい。
恋愛においては私よりずっとたくましい彼女に感服だ。
「それに、私はまだもうしばらく20代ですし」
「ひと言多いよ」
「さ、仕事しましょう。来年のテレビのことでしたね」
毒を隠し持っているけれど、魅力的な彼女なら、すぐにでもいい人が見つかるに違いない。
私に足りない女性としてのズルさを、これから彼女からとくと学ばせてもらうとしよう。