恋愛じかけの業務外取引

全体的には細身なのに、胸と上腕の筋肉がより発達したボクサー体型。

腹部もキレイに6つに割れている。

こんなにキレイな筋肉をしている人の体を間近で見るのは初めてだ。

私が驚いたのは彼が半裸だったからじゃない。

スリムな体型をしているように見えていたのに、脱いだらすごかったから。

クールビズの時期だって、シャツで隠れてわからなかった。

「なんでって、鍛えてるから?」

どうやらジムには健康とか運動不足解消のためじゃなくて、筋力トレーニングのために通っていたらしい。

「顔つきと体型のギャップが半端ない……」

「ギャップ萌えする?」

甘い顔をした厳つい体の男が、ニヤリと笑う。

これまでビジネスにおいて構築されてきた堤凛太郎のイメージがどんどん崩れていく。

この人のパーソナリティがわからない。

癒し系とか、甘顔イケメンとか、爽やか青年とか、そういう誰かとひとくくりにする言葉なんて、彼においては無意味に思える。

「他にもギャップがありすぎて、もはや萌える要素が見つからない」

「ちぇー」

「さっさと服着て。湯冷めする」

「はーい」

彼はビール片手に寝室へ入り、缶のままビールをぐいっと煽って一息つく。

私は彼がベッドに放置されていた部屋着に袖を通したのを確認して、食卓の準備を続けた。



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