恋愛じかけの業務外取引

残ったカレーとご飯を一食分ずつ冷凍庫へ入れ、洗い物をして、ちょうど洗い上がった洗濯物を干す。

堤さんは仕事とジムで疲れているうえにカレーのおかわりをして満腹になったからか、ベッドに横たわってすぐに眠りについてしまった。

この部屋はベランダには寝室からしか出られない間取りになっている。

私が洗濯物を干すために多少バタバタしても、彼が起きる気配はない。

大人しく眠ってもらっている方が、ちょっかいを出されない分作業効率が上がっていい。

心配なのは、彼がちゃんとこれを取り入れて、綺麗にたたんでクローゼットの中の衣装ケースにしまってくれるかどうか。

彼の生活力のなさから推測すると自分ではやらなさそうだから、明日ちゃんと取り込むよう伝えよう。

面倒だと言われたら、明日も来るしかない。

こちらこそ面倒だけど、私は無期限無償の家政婦なのだ。

今日の作業を終えたのは、午後10時半頃。

私は帰宅の許しを得ようと、眠っている彼に近づいた。

腹部にだけ掛け布団をかけ、子供のような寝相で寝息を立てている。

「……かわいい寝顔しやがって」

寝顔だけは見た目のイメージ通りだ。

肌キレイだな。

32歳のくせにシミのひとつもない。

洗面台にイズミが扱っているオーガニックの化粧水が置いてあったから、使ってるんだろうな。

唇も嫌味なくらいにプルプルだ。

会社で会ったときよりちょっとヒゲが伸びている。

まつ毛は長くないけれど、ちょっと下向きに生えているから垂れ目が強調されてるんだよな。

私はつり目気味だから、ちょっとうらやましい。

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