恋愛じかけの業務外取引

「なんだこれ。すんげーうめぇ」

や、やったあ……！

テーブルの下で小さくガッツポーズ。

よかった、やっと美味しいって言ってもらえた。

「普通じゃないカレーの作り方を教えて」なんていう奇妙なリクエストをした私に、快くレシピを教えてくれたユリに感謝しなきゃ。

自分の頬が緩んだのを感じ、照れくさくなって慌てて引き締める。

そして特になんでもないように澄まして告げた。

「それはよかった」

「あー、マジでうめぇ。止まらない」

堤さんはそう言って美味しそうにガツガツ食らい続ける。

その姿に、心の奥の方にあるなんだかよくわからない部分がキュンと疼く。

なんだろう、この感覚。

堤さんに限らず、これまでにも人が美味しそうに食べている姿を見て嬉しく思うことはたくさんあった。

だけど、こんなに胸がいっぱいになったことはなかったと思う。

作った料理を褒められるって、こんなに嬉しいことだったんだ。

彼は私がまだ半分も食べ終わらないうちに、ペロッと１杯平らげてしまった。

「おかわり！」

期待に目を輝かせた少年のような表情で器をこちらによこす堤さん。

実は私は彼がカレーを食べる前……厳密に言えばこの部屋の合鍵を使う前から、彼がその言葉を告げるのを待っていた。

なぜなら私はユリから、“必殺技”なるものを授けてもらっているからだ。