恋愛じかけの業務外取引
あ、これはヤバいかも。
そう思うや否や、私の胸がキュンと強く締め付けられる。
堤さんのプライベートに関わるようになって、うっかりときめいてしまうことは、これまでにも何度かあった。
わざとなのかそうでないのかは定かでないが、いずれも彼の私イジりによるものだったと思う。
その時はドキッとさせられたけれど、オチがあったりからかわれただけだったりした。
だけど、今回は違う。
だってさっきの言葉はきっと彼の本心だった。
だから胸がキュンとしたまま落ち着かない。
これってもしかして、私、堤さんのことを……
「そういえばマヤ、俺のパンツ洗ってくれた?」
……俺の……パンツ……。
このタイミングでそれ言う?
ねえ、それってわざと? わざとなんだよね?
そうじゃなきゃ、ある意味天才だ!
がっつり胸キュンして超損した。
私のときめきを返せ。
「洗ったよ干してあるよ明日には乾くからまた自分で取り入れて」
私が早口で捲し立てると、堤さんは不思議そうに首を傾げた。
「わかった。ていうかマヤ、なんか怒ってる?」
さっき勢い余って妙なことを考えそうになったけど、きっと気の迷いだ。
食事前に将来のことを想像してしまったのもあって、思考がついそちらに流れてしまっただけ。
「怒ってないし」
「あ、わかった。俺がカレー奪ったから拗ねてんだろ」
大丈夫。ちゃんと弁えてる。
私は彼のクライアントで、加害者で、家政婦。
彼が際どい駆け引きを楽しんでいるからといって、それを本気にしてはいけない。
私はそれを思い出させてくれた彼のパンツに感謝をしつつ、彼に見せつけるようにカレーを口に入れた。