恋愛じかけの業務外取引

堤さんお得意の、意味深な表現。

彼はどれだけ私を惑わせれば気が済むのだろう。

いつも期待した直後にガッカリさせられている気がするが、もしかしてそれも彼の術中だったりして……。

そう考え至ると、さっきのセリフにどんな返答を期待されているのか、わかってしまう。

「いったい私をどんな目で見てるの?」

わかっているのにまんまと期待に応えてしまう、自分の素直な性格が恨めしい。

今度はどんな刺激を与えられるのか、楽しみにしてしまっている。

彼に心を揺さぶられることを望んでいる。

「どんな目なんだろうな。すっげーいやらしい目で見てるかもよ?」

ニヤリと片方の口の端を上げ、悪い顔で微笑んだ彼は、もしかしたら。

私がそう望んでしまっていることに、とっくに気づいているのかもしれない。

「いやらしい目って、そんなにタレ目なの?」

まんまと照れてしまうのは癪だから軽く反撃。

すると彼の意地悪顔は一変、不機嫌そうに眉間にシワを寄せた。

「タレ目関係ねーだろ。俺だって嫌なんだよこんな顔」

「なにそれイケメンの嫌味?」

そんなにキレイな顔をしておいて、嫌だなんて。

もっと両親から授かったDNAに感謝すべきだ。

「俺はもっと厳つい顔がよかった」

「はぁ?」

「だって俺の顔、弱そうじゃんか」

< 74 / 216 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop