恋愛じかけの業務外取引
堤さんお得意の、意味深な表現。
彼はどれだけ私を惑わせれば気が済むのだろう。
いつも期待した直後にガッカリさせられている気がするが、もしかしてそれも彼の術中だったりして……。
そう考え至ると、さっきのセリフにどんな返答を期待されているのか、わかってしまう。
「いったい私をどんな目で見てるの?」
わかっているのにまんまと期待に応えてしまう、自分の素直な性格が恨めしい。
今度はどんな刺激を与えられるのか、楽しみにしてしまっている。
彼に心を揺さぶられることを望んでいる。
「どんな目なんだろうな。すっげーいやらしい目で見てるかもよ?」
ニヤリと片方の口の端を上げ、悪い顔で微笑んだ彼は、もしかしたら。
私がそう望んでしまっていることに、とっくに気づいているのかもしれない。
「いやらしい目って、そんなにタレ目なの?」
まんまと照れてしまうのは癪だから軽く反撃。
すると彼の意地悪顔は一変、不機嫌そうに眉間にシワを寄せた。
「タレ目関係ねーだろ。俺だって嫌なんだよこんな顔」
「なにそれイケメンの嫌味?」
そんなにキレイな顔をしておいて、嫌だなんて。
もっと両親から授かったDNAに感謝すべきだ。
「俺はもっと厳つい顔がよかった」
「はぁ?」
「だって俺の顔、弱そうじゃんか」