恋愛じかけの業務外取引

自分の見た目や外面ばかりが目立って、中身を見てもらえず、うまくいかない。

まるで自分の話を聞いているようで、えも言われぬ愛しさが湧いてくる。

だってその悲しさを、私もよく知っている。

「私と同じだね」

「同じ？」

「うん。私もね、昔から矢面に立ったり仕切ったりすることが多かったから、自立した女を求めてる男性としか縁がなくて。甘えたがると振られちゃうの」

３年前に『期待外れ』と言われた記憶がよみがえって、胸がギュッと苦しくなる。

彼もこんな苦い思いを、幾度となく味わってきたのだろう。

私は彼を頼りないと思わないし、思い通りにしようなんて思いもしないのにな。

「俺は甘えられると嬉しいんだけどな」

私が心で思ったことと、彼が口に出した言葉が重なった。

「え……？」

「なんだよその顔。どうせ家のことなんにもできなくてマヤに甘えてるくせにって思ったんだろ」

「あ、いや……」

そうじゃない。

私に「甘えていいよ」って言ってるのかと思って、性懲りもなくときめいてしまっただけだ。

「俺は苦手な部分では相手に甘えたりもするけど、相手が甘えたい部分はズブズブに甘やかすのが好きなの。持ちつ持たれつ。ギブアンドテイク。自然にそうできる女が……見つかればいいけどな」

自然に、か。

不自然に始まった私との利害関係は、きっと対象外。

「そうだね。見つかるといいね」

そう応援した口が、すごく重かった。

私はモヤモヤした息苦しさを覚えながら、残りの洗濯物をたたむことに集中した。