恋愛じかけの業務外取引
たたんだ洗濯物をしまってからは、夕食の準備。
前に作り置きしたキーマカレーを解凍し、買ってきたクリームと牛乳で伸ばしてスープパスタを作る。
それにサラダを添えるだけの、簡単なディナー。
なのに堤さんは、至福のため息をこぼしながら賞賛した。
「うわあ……うめぇ……!」
そして再びサラダの存在を忘れてそればかりに食らいつく。
よっぽど気に入っていただけたようだ。
「大袈裟。ただのカレーだよ」
ユリから教わった、簡単で美味しいキーマカレーのアレンジ料理。
他にもリゾットや焼きカレー、カレーうどんなどのレパートリーがあるのだが、アレンジ1品目でここまで喜んでもらえるのなら、料理初心者の私でも、このまま彼の胃袋を掴める気になってしまう。
「俺、マヤのカレーが世界一好きかも」
「最初のカレーは普通でつまらないって言ってたくせに。調子よすぎ」
「いや、結構マジだから。自分で食っててもうまいっしょ?」
「まあ、たしかに美味しいけど」
自分で食べてビックリしたけど、クリームと牛乳で伸ばして塩コショウで味を整えただけのこのパスタは、実際期待以上に美味しい。
「あー、うまかった。余は満足じゃ」
「満足って、まだサラダ食べてないじゃん」
「あ、また忘れてた」
「カレーばっかガツガツ食べないで、ちゃんと交互に食べてよ」
「しょうがねーだろ。うまいとそっちばっか食っちゃうんだよ」