恋愛じかけの業務外取引
いやいやいやいや、なにやってんの私。
カフェインたっぷりのドリップコーヒーを飲んだにもかかわらず、人の家でぐっすり熟睡って。
しばらく仕事がハードで睡眠もちゃんと取れてなかったからって、情けないったらない。
ていうか、この体勢ヤバくない?
腕が巻き付いているし、堤さんの寝息を肩に感じる。
シングルベッドに大人ふたりだとさすがに狭いし、私は着てきた服のままだし……。
「ひゃあ!」
とんでもないことに気づいてしまって、私はとうとう悲鳴をあげてしまった。
「ううぅ……マヤ……うるさい」
彼は眠そうに言いながら私をより強く抱きしめる。
私は力の込められた彼の腕をバシバシ叩き、彼を起こした。
「ちょっと、堤さん!」
「ん……もうー、なにー? まだ夜中じゃん」
堤さんが枕元に置いていた携帯で時刻を確認する。
ディスプレイには3時43分と表示された。
もうすぐ朝と呼べる時間だが、私は7時間以上眠っている計算になる。
しかし、久々にゆっくり眠ったなぁなんて、のんきに考えている場合ではない。
私は少しだけ彼と距離を取った。
「私、ジーパン履いてない!」
恥ずかしくて声に出しては言えないけれど、もうひとつおまけに、ブラのホックも外れている。
男の部屋で、なんという格好……。