恋愛じかけの業務外取引
「メーカーからもらったメイク落としとか化粧品がたくさんあるから、好きなやつ勝手に使って。タオルとか歯ブラシもご自由にどうぞ」
「どうも」
職業柄だけど、この家には無駄に日用品や化粧品がたくさんある。
彼が自分で使わないものは独立洗面台の下の棚に、私が片付けた。
こんなに溜めてどうするのだろうと思っていたけれど、まさか私が使うことになるとは……。
今のところ、彼と一番距離が近い女は私だと思っていいのだろうか。
「俺は寝る」
「はいはい、起こしてごめんね。おやすみ」
彼がリモコンで照明を消し布団に潜ったのを見届けて、私はベッドを出た。
暗くてちょっと危ないけれど、下着が見えないよう、彼なりに気を使ってくれたのだと思う。
「あ、マヤ」
彼が布団に顔を埋めたまま、眠そうな甘い声で私を呼ぶ。
「なに?」
「紺色のパンツ、似合ってるよ」
ああああああ、本当に自分が情けない。
脱がせてもらったなんて、恥ずかしくて消えてしまいたい。
「……ありがとう」
こんなことになるなら、もっとキレイな下着を着けておくんだった。
今日のうちに下着一式買い替えよう。
もちろん、紺色のものも。
私はそう決意して、浴室に向かった。