恋愛じかけの業務外取引
翌日、土曜日。
私は強烈な二日酔いの状態で目を覚ました。
時計を見ると、時刻は11時45分。
明るさから察するに、午前である。
「ああ……最悪」
メイクも落とさず仕事着のパンツスーツのまま、ベッドで眠っていたようだ。
おかげで顔はドロドロ、スーツはシワシワ。
一歩も動きたくないくらい気持ち悪いけれど、シャワーを浴びたりスーツをクリーニング屋に持って行ったりしなければならない。
ていうか、昨夜はどうやってここまで帰ってきたんだっけ。
思い出そうとしたところで、部屋の扉が開いた。
「あっ、マヤ姉やっと起きたの?」
入ってきたのは妹のユリだ。
ゆるふわ系の美女で、24歳のフリーター。
今は雑貨も売っているカフェでウェイトレスをしている。
愛嬌が抜群で料理などの家事も得意。
甘え上手な守ってあげたくなる系女子である。
私とは顔も性格も、同じ親から生まれてきたとは思えないほど似ていない。
私とユリは昔から、この部屋を一緒に使っている。
「おはよ……」
「おはようって、もうすぐお昼だよ。お昼ご飯できるけど、食べるでしょ?」
「いや、いい……全然食欲ない」
「ていうかマヤ姉!」
ユリは昼食のことなどどうでもいいというように、勢いよく私のベッドに飛び乗ってきた。
上下に弾んで、二日酔いの頭にぐわんぐわん響く。
お願いだから刺激を与えないでほしい。
「昨日のイケメン、彼氏?」
「……は?」
キノーノイケメン・カレシー?
なにそれ呪文?
「だから、昨日マヤ姉を送ってくれた、超絶爽やかな男の人だよ!」