スイッチ
「じゃあ、今日はここまで」
そんな先生の声で現実に引き戻される
ほとんどうわの空で写していたノートは、所々字が曲がっていた
次の授業は注意を受けないようにと、早々と次の英語の教科書をスクールバックから取り出していると、自分の手元に影が降り立った
反射的に顔を上げると、そこには淳の姿が
えっ?何で?
先程まで穴が空くほど見つめていた人が、急に自分の目の前に現れると、どうやら人は硬直して何も言えないみたいだ
その証拠に私の体は驚くほど硬直して、何も言えないでいる
そんな時、
「さっき、何で遅くなったん?」
先に口を開いたのは、淳だった
「えっ?」
「授業、聡と一緒に遅れてきてたじゃん
宇美が遅れるとか………珍しいなって」
あ、そっか
もしかして体調悪いのかとか、心配してくれたのかな?
そんな小さな気遣いの言葉にも、こんなに心が温かくなってくる
「ちょっと聡君と話し込んじゃっただけだから、私は大丈夫だよ!」
元気だという意味を込めて笑いながらそう答えると、
「そっか………ならいいけど
次は遅刻するなよ!」
そういって、優しく頭を撫でられた
これは淳の昔からの癖
私に何か注意するとき、お願いするとき、褒めるとき……
いつもこうやって頭を撫でる
昔は子供扱いされてるみたいですごく嫌だったのを覚えてる
「はーい!」
だけど今は……そんな行動も嬉しくて、自然と笑顔になってしまっていた