スイッチ



俺がずっと口を開けて待っていると、真っ赤な顔で躊躇しながら一口大に切ったパンケーキをフォークに刺した宇美


その様子をじっくり観察する


こちらをチラッと見て、なんとか決意を固めたのか、パンケーキを刺したフォークをゆっくり俺の口に持ってきた



パクっ




一瞬で口の中が甘く変わる


苺ソースがかかったパンケーキは、甘酸っぱさもあり、まるで今の俺の気持ちを表しているみたいだった



「………美味しい?」



控えめにそう聞いてくる宇美



「うん……めちゃくちゃ美味い」



その瞬間、まだ真っ赤な顔をしながらも笑顔になるから、今度は俺の方が照れてしまって、多分今顔が赤くなっていると思う


こんなささいなやり取りが、この時間がくすぐったくもあり、なんだかとても心地よく感じて


こんな時間がずっと続けばと思いつつ、もっともっと宇美に近づきたい気持ちが日に日に大きくなる


もし、もし俺が今ここで宇美に向かって『好きだ』と伝えたら、一体どんな顔をするんだろう



びっくりする?


また顔を赤くする?



…………喜んでくれる?




どうしてもそこに自信が持てなくて、素直な気持ちを伝えることができない自分が初めて臆病なんだと知ったんだ……


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