スイッチ


私を引いて歩く目の前の淳はこちらをチラリとも見ず、無言で改札を通り過ぎ、ホームの奥まで進んでいく


私の腕を掴む手は、いつもの優しいものでなくて、力が入った少し乱暴のもので………


何か怒らせちゃったのかな?


分からない淳の行動に不安な気持ちが押し寄せてくる



「痛っ」



強く掴まれた腕が痛んで、思わず声をあげてしまった



「わりっ………」



その瞬間、淳の手が私の腕から離れていく……


その時に見えた表情は、なぜかすごく悲しそうなもので、その表情の理由を聞かずにはいられなかった



「淳、何かあったの……?」


「…………」


「……私、何かしちゃったかなぁ?」


「っ……ちがっ!!」



そう言う淳は今度は苦しそうな表情で、私を見たかと思ったら、今度は下を向いて黙ってしまった



本当にどうしたんだろうと気になって、俯いた淳の顔を見ようと覗きこんだ時………




「………吉田と仲いいの?」




か細い声が聞こえてきた

< 80 / 126 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop