声にできない“アイシテル”
 誰もいない図書室で、大きなため息をついた。



 みんながどんなにあの先輩がイイって言っても、私には苦手だ。


 いくらカッコよくても。

 いくらスタイルが良くても。


 あの冷たい表情は、イヤ。



―――困ったなぁ。
   圭ちゃんの教室に行きづらくなっちゃったよ。


 もう一度ため息。




 そこに遠くからこっちに向かってくる足音。

 走ってはいけない廊下を、猛ダッシュで近付いてくる。




 図書室の扉が開いて、現れたのは桜井先輩だった。
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