声にできない“アイシテル”
―――なんで?
   文句が言い足りなくて、追いかけてきたとか?!

 それとも、一回頭を下げただけじゃダメだった?!


 私はあわてて頭を下げる。

 何度も、深々と。



 ふいに肩に手が置かれる。


 顔を上げると、さっきの怖そうな顔とは全然違う先輩。


 すごく申し訳なさそうな表情だ。




 そして、真剣に謝ってくれた。




 これまでにも、私が話せないことをあとから知って謝ってきた人もいたけど。

 こんなに一生懸命に謝られたのは初めてだ。


―――思っていたより、悪い人じゃないのかも。


 私は『気にしてない』という意味で、首を横に振る。


 ひどい言葉で傷ついたことは過去に何度もあったし、もう慣れてきた。




 そう伝えたら、なぜか先輩が怒り出した。

「何度言われたって傷つくに決まってる!
 心の痛みに、慣れなんてない!!」


 あまりの勢いに、私はポカンと口を開けた。
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