声にできない“アイシテル”
「10才位までは話せていたんだよ。
 でも、声帯に異常が見つかって・・・。
 命に関わる事だから、手術をしたって聞いた。
 それ以来、話すことはできないんだ」

 小山はまるで自分のことのように、つらそうな表情をしている。

 


 俺は愕然とした。



『黙っていられると気分悪い』

 話すことが出来ない少女に向かって、何てひどいセリフだろう。



 とたんに申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになる。 

 小山以上に、自分の顔がつらそうになっているのが分かった。






「声が出ない以外は何の問題もないからね。
 だから養護学校じゃなくって、こうやって普通の高校に通ってる訳」



 小山がふと話を止めて、俺を見る。

「どうした?
 そんな暗い顔して」




「俺、あの子にひどい事言った・・・」



 今はもうとっくに姿がないのに、彼女が歩いていった方向をじっと見つめて呟いた。




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