声にできない“アイシテル”
 なんだか小バカにされたみたいでムッとする。
 

「そういうお前はどうなんだよ?」

「俺はあるぜ」

 にやりと得意げに笑う小山。


「うそだろっ?!」

「何だよ、その反応。
 失礼な奴だな」

 口を尖らせて俺をにらんでくる。


 でも次の瞬間、へへっと笑った。

「相手はチカちゃんだけどね。
 映画とか、水族館によく行った」

「何だ、イトコとか。
 それってデートって言えんのか?」

「女の子と出かければ、たとえイトコとでもそれで立派なデートなんだよ」


 なんて自分勝手な理屈だ。

 クスクスと笑いながら、俺はふとあの子を思い浮かべる。


 あの子は他の女子と違って、そばにいてもうっとうしくない。


―――大野さんとだったら、デートしてみてもいいかもな。





「・・・桜井。
 顔がやけに楽しそうだけど、何を考えてたんだ?」

「え?
 べ、別に・・・」


 俺はこれ以上小山に突っ込まれないように、視線をそらした。
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