声にできない“アイシテル”

人を好きになる権利

 俺は体育祭のとき以上に一生懸命走った。

―――早く行かないと!
   早く!
   早くっ!!


 校舎の角を曲がって目に入ったのは、ケラケラと笑い続ける3年の女子の背中。


 それと、スカートをぎゅっと握り締めて、必死に涙をこらえている大野さんだった。





「お前ら、何やってんだっ!!」

 5人を大声で怒鳴りつけた。


 ギクリ、と体をこわばらせ、5人がゆっくりと振り向く。


「桜井君っ!
 どうして、ここに?!」

 松本の顔が真っ青になる。


 問いかけを無視して、俺は肩を震わせている大野さんに近づいた。

 そして、小さな彼女を自分の後ろに隠す。


「先に質問させろ。
 何でこの子を呼び出したりしたんだ?!」

 低く冷たい声で問いかけ、5人をじっくりとにらみつける。


 とたんにオロオロと視線を泳がせる彼女たち。

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