声にできない“アイシテル”
 ヒステリックな松本よりもさらに大きな声を上げる俺。

「ふざけたこと、言ってんじゃねぇよ!!」


 俺の勢いに、5人が後ずさりする。


「人の心の痛みが分からないお前らのほうが、よっぽど欠陥だらけだっ!
 下級生1人によってたかって言いがかりをつけるなんて。
 ホント、最低だな!!」


「そんな、ひどいっ。
 私は、ただ桜井君のためを思って。
 あなたが好きだから・・・」

 松本が俺にすがるような視線を送る。


 俺は一つ息をつく。

「もちろん松本にも、そこの女子たちにも、人を好きになる権利はあるさ」


 好きになるだけなら、何の問題もない。


 彼氏がいる女の子を好きになることも。

 彼女がいる男の子を好きになることも。


 好きでいるだけなら許されると、俺は思う。



 報われないことを承知で、影ながらそっと想いを寄せることは悪いことじゃない。

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