声にできない“アイシテル”

届いた想い

 あいつらの姿が見えなくなったところで、俺の背後にいた彼女がゆっくりと息を吐く。


「大丈夫だった?
 怪我はない?」

 彼女の様子を頭からつま先まで見る。

 スカートが少し汚れているけど、傷はなさそうだ。


 彼女が“平気です”という意味で、静かに首を振る。


「ごめん。
 俺のことで巻き込んだりして」
 

 再び首を横に振る彼女。


 大きく深呼吸をして、スカートのポケットからメモとペンを取り出した。

“どうしてここが分かったんですか?”


「3階を歩いていたら、あいつらに連れられてる君を見たんだ」


“そうでしたか。
 わざわざありがとうございます。
 私ならもう大丈夫ですから、気にしないでください”


 ペコリ、とお辞儀をする彼女の肩をつかむ。

「平気じゃないだろ?!
 こんなに震えてるのに・・・」


 小刻みに揺れ続ける細く小さな肩。
 

< 134 / 558 >

この作品をシェア

pagetop