声にできない“アイシテル”
「一生懸命応援してくれてるチカちゃんに、中途半端な俺を見せたくなかった。
 だから、必死で走った」

“そうだったんですか”

「次の日、筋肉痛で大変だったけどね。
 頑張ってよかったぁ。
 おかげで好きになってもらえたから」


 彼女の前だと素直に言葉が出てくる。

 まぁ、聞いてる彼女は真っ赤になったり、モジモジしたり、落ち着かないみたいだけど。




“どうして先輩はこっちが照れるようなことを平気で言うんですか!
 ドキドキしすぎて、心臓が壊れそうですよ!!”

「しかたないよ、自然に口から出るんだし。
 ・・・でも。
 チカちゃんの心臓が壊れるのは困るから、もう言わない」


 それを聞いた彼女の顔が不安そうな色に染まり、遠慮がちに俺の腕に触れてくる。

 そして、『イヤだ』と言うように首を小さく横に振った。




 俺はにやっと笑う。

「・・・ウソだよ」

 

 ああっ、と大きな口をあけた彼女は

“先輩の意地悪!”

 と書いたメモをさっと俺に押し付けて、プイッと横を向いてしまった。
 


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