声にできない“アイシテル”
「そうです!」

 短く言い切り、少しは離れたところでまだゼーゼーいってる小山を呼んだ。

「おいっ!
 お前どんな説明をしたんだよ?!」

「え?
 “一年の大野さんが連れて行かれて、大変な目に合いそうだ”って・・・」

「そんな言い方したら、今ここにいる俺が彼女にひどいことをしてるみたいじゃねぇかよっ!」

「あ、そうか。
 ごめん」

 小山は頭をかいた。


「しっかりしてくれよ」

 やれやれと、俺はため息をつく。

「というわけで、彼女を連れ出したのは俺じゃなくて松本たちです」


「大野、本当か?」

 先生の言葉に、彼女は大きくうなずいた。


「よし、分かった。
 あいつらには俺から注意をしておく。
 じゃ、気をつけて帰れよ」


 俺たちにそう言い残し、先生は校舎に戻っていった。



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