声にできない“アイシテル”
 チカの仕事が終わり、俺たちは近くのファーストフード店に入る。


「チカ、さっきは何を買ったの?」


 ここに来る前、彼女は“買いたい本があるから”と、本屋に寄った。


 チカはテーブルの上に一冊の本を乗せる。

 優しい線で描かれた猫が表紙の絵本だった。


 ぱらぱらと中をめくると、そこには短いけど穏やかな言葉がたくさんあって。


 この年になって絵本に興味はないけど、この本はいいなって思った。




「これがどうかしたの?」


“好きな作家さんなの。
 私、将来は絵本作家になろうと思うんだ”


 少しはにかみながらメモを差し出してきたチカの瞳は、まっすぐと力強い。



―――チカは自分にハンデがあっても、しっかりと先を見てるんだ。


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