声にできない“アイシテル”
 部屋に戻って、携帯電話を取り出す。


 叔母さんに『指輪を買うときにはサイズを確認しなさいね』と、注意されたのだ。


 チカには内緒で用意するから、本人には聞けない。

 と、いうことで小山に電話することにした。

 


 彼女には絶対に秘密だからと念を押すと、小山はニヤニヤするのを隠しもしない。


『へぇ、桜井がチカちゃんのために指輪を買うのかぁ。
 うわぁ、マジで惚れてんだぁ』

「うるさい。
 それで、教えてくれんのかよ?!」

『チカちゃんのお母さんにこっそり聞いてみるよ。
 折り返しかけなおす』



 そして待つこと10分。

 小山はきちんと調べてくれた。



 散々俺をからかってきたが、電話を切る間際『チカちゃんをよろしくな』と、まじめな声で言われた。


「小山?」

『ホントに頼むな。
 チカちゃんはこれまでつらい思いをしてきたから、幸せになってほしいんだ』


 小山としては彼女の兄という気分なんだろう。

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